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スポーツヘルニア(鼠径部痛症候群)
以前「スポーツヘルニア」と呼ばれていたスポーツ選手(特にサッカー選手:サッカーは走りながら身体を捻ってボールを蹴るという特殊な動作により無理な腹圧がソケイ部にかかるため)に見られるソケイ部の痛みは、現在「鼠径部痛症候群(groin pain syndrome)」と呼ばれています。
 
日本では従来スポーツ選手におけるソケイ部周辺の痛みに対し「恥骨結合炎」や「内転筋付着部炎」と診断されるケースが多くそれに対する治療が行われるも症状がなかなか軽快しないということが多くあったようです。
 
しかしソケイ部の痛みが体幹・股関節周囲の筋力、筋緊張のバランスが崩れたために起こるもので、ソケイ管の後壁いわゆる横筋筋膜の脆弱化により腹圧がかかった場合、ソケイ管やその周囲の組織を圧迫することによって起こる「スポーツ版脱腸」と診断されるようになったのはまだごく最近のことのようです。
 
■診断
超音波検査によりソケイ管の後壁いわゆる横筋筋膜の脆弱化が見られれば診断できます。もちろん患者様の趣味、職業などからあらかじめソケイ管の脆弱を疑っていなければ診断は困難ですし、ソケイヘルニアと紛らわしい疾患(クリックにて飛ぶ)をしっかり鑑別しなければいけません。


■治療
以前は手術が行われたケースも多かったようです。しかし、通常のソケイヘルニアとは異なりヘルニア内容が筋肉の断裂や開大におけるものではないため保存的に治す方法が第一選択になっています。
 
しかし、ただ安静にするだけでなく、慢性化している場合は特に適切な筋肉強化が必要です。ソケイ周辺部痛を生じていても、通常は股関節の外転、外旋、伸展動作には痛み無く負荷を加えることができるのです。実際に2〜3ヶ月程度のリハビリで多くの選手が競技に復帰しているようです。


■具体的なリハビリテーション
  1. 内転筋と腰背部、ハムストリングの拘縮除去
    強刺激のマッサージを拘縮が改善するまでできる限りの頻度で行う
     
  2. 腹筋の訓練
    激しい腹筋の筋力アップではなく、膝、股関節を屈曲させ、上体を少し起こした位置で静止し腹筋を鍛えます。
     
  3. 股関節外転・伸展筋力訓練
    立位でのゴムチューブ、うつ伏せの状態での反対側の手と足を上げるなど
     
  4. 立位で全身を使うスイング
    支持棒をつかんで片脚で立ち、もう一方の足を前方から後方へ、外から内へスイングする。
     
  5. リハビリを進める中で、股関節を最大可動域まで開いても痛みが生じないレベルまで股関節の拘縮が改善し、外転・伸展筋力も痛みなく最大筋力を発揮できるようになってはじめてランニングやキックを再開させることができます。
 
Medical Tribune Vol. 34, No. 40, p12, 2001